はじめに

  奄美群島は南西諸島のうち、薩南諸島南部にある島興群であり、奄美大島、加計呂麻島、与路島、請島、喜界島、徳之島、
沖永良部島、与論島の8島より成る。奄美群島は、琉球弧(地殻変動によりユーラシア大陸南東縁が島興化して形成された
九州南部から台湾へと連なる島々)の北端近くに位置しており、陸域に生息する多くの動植物が島興隔離下のもとで独自の
種分化を遂げてきた生物多様性の高い地域である。奄美群島は亜熱帯性気候下にあり、四季を通じて温暖多雨で、作物の
生育に適した条件に恵まれているが、病害虫の発生、夏期の台風や冬期の季節風等の農作物の生産を阻害する自然要因も
ある。農耕地の殆どは畑地となっており、さとうきびを基幹作物に野菜、花き、畜産、果樹の農業が営まれている(図1参照)。

 さとうきび生産を中心とする第一次産業の産業構造における比率は5.4%と全国平
均の 1.4%に比べて高く、群民一人あたりの所得も全国平均の74%と経済的には厳
しい状況 にある(奄美群島の概要:鹿児島県、平成24年6月)。加えて、近年はTPPの
導入等による グローバル化により、さとうきび生産はより厳しい状況に追い込まれ
る可能性も 懸念さ れている。このような厳しい経済状況にある奄美群島にさとうき
 び以外の作物を導入し、新しい産業を振興することを目的としてNPO法人奄美機能
 性食品開発研究会が2011年2月に設立され、多様で豊かな奄美の生物資源を活用し
た機能性食品開発に向けた取り組みが始まった。本稿ではNPO法人奄 美機能性食品
開発研究会の活動について紹介し、次いで機能性食品素材としてのアマミシマアザミ
の機能性について紹介する。

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